コラム

パスタの山

大学に入学してすぐ、なんだかよくわからないまま先輩に連れて行ってもらった場所で見たものは、パスタの山だった。

立食パーティにあるような量のイタリアンパスタは、その喫茶店で僕がオーダーした。

ラグビー部の先輩はサイゼのランチのように食べていた一方で、僕は胃袋が頑張っていた。

でもプラス50円で大盛りにして後悔したのは最初だけで、おいしくて量もあるパスタを食べるために、覚王山にある「コットン」に何度も通った。

余計なお世話かもしれないが、コロナ禍で最初に心配になったのは、おばちゃんとおっちゃんが2人でやっていたコットンだった。いまもまだ行っていないので、どうなっているか気になっている。

店内のパスタの蒸気ですこし湿っているジャンプの表紙は、コットンで最初に見た光景の次に忘れていない。

お店が気になっているのは、きっと自分が、「場所」というものはいつかはなくなってしまうものだと思っているからだろう。記憶は悲しさと面白さの種で、いずれ寂しさの芽になっていく。

余談だが、東山で「山のパスタ」と言ったら、甘いやつである。


江坂大樹(えさかだいき)
工作、デザイン、企画を行うクリエイター。名古屋大学情報文化学部4年。サークル「大学生の自由研究」にて路上演劇を中心に活動したのち、現在はミスター名大として新たなカルチャーを生み出している。
Twitter:@esakadaiki

東山カルチャーコラムは、東山エリアについて、ゆかりのある方になにかしらの文章を書いていただいて掲載しているコーナーです。毎週金曜17時更新予定。2020年6月のテーマは「東山のお店」です。

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